どーももんたです。
悪性腫瘍や肝硬変などで異常に溜まる腹水。
エコーでも腹部膨満感でたまたま検査をしたら腹水が溜まっている!?なんてこともあると思います。
腹水があるという所見も大事ですが、原因を探ることが非常に重要になってきます。
では腹水とはそもそもなぜ溜まってしまうのでしょうか?
エコーで腹水をみつけたときにも焦らないで検査するためにも今回は腹水についてまとめてみます。
腹水ってなに?
そもそも腹水とはなんでしょうか?
腹水は言葉の通りおなかの中に溜まる水です。この水はタンパク質を含んだ体液になります。
元々おなかの中には生理的に少量の体液は存在します。量にして30~40mlほどはあります。
この生理的範囲を超えて貯留した場合を腹水(+)とします。
主な原因としては門脈圧亢進や浸透圧の低下、がんなどがあります。
症状としては体重増加、食欲がなくなったり息切れ、不快感、下腹部がぱんぱんになり苦しくなるなどがあります。
治療としては塩分制限や利尿剤で尿としてだす、穿刺して抜くなどがあります。
しかし原因となっているものを取り除かなければまた増えてしまうのでそちらの治療も必要です。
分類
腹水は性状から漏出性と滲出性に分けられます。
タンパク質の量が多いのが漏出性、少ないのが滲出性です。目安として血清・腹水アルブミン濃度差(SAAG)が1.1g/dl以上か未満かで分けるのが信頼性が高いとされています。
滲出性:血管透過性の亢進やリンパ流のうっ滞などにより、タンパク質や細胞成分を多く含んだ血漿成分が、腹腔内へ滲出したもの
それぞれの性状を表でまとめます。
漏出性 | 滲出性 | |
外観の色 | 透明、淡黄色 | 血色、暗褐色、混濁、クリーム色 |
比重 | <1.015 | >1.018 |
蛋白濃度 | <2.5g/dl | >4.0g/dl |
SAAG | ≧1.1g/dl | <1.1g/dl |
リバルタ反応 | (ー) | (+) |
腹水LDH/血清LDH比 | <0.6 | >0.6 |
フィブリン析出 | 少 | 多 |
細胞成分 | 少 | 多(多核白血球、リンパ球) |
原因 | 門脈圧上昇 血漿膠質浸透圧低下 腎糸球体ろ過量低下 下大静脈圧 |
炎症や腫瘍による血管透過性上昇 |
腹水はどうやって発生する?
さて腹水がどんなものかをみてきました。
次はどうやって増えていくのかをみていきます。
これも漏出性なのか滲出性なのかで発生の仕方も変わってきます。
それぞれでわけてみていきます。
漏出性腹水
アルブミンの低下
血中のアルブミンの濃度が少なくなると水を血管内に保とうとする力(→膠質浸透圧といいます)が落ちます。それにより水が血管の外に移動し腹腔に溜まります。
門脈圧の亢進
門脈圧の亢進は類洞内圧の上昇につながり、肝臓で作られるリンパ液が増えます。
リンパが作られる量がリンパ管に出ていく量を上回ると腹腔内へ漏れでます。
その結果血管を循環している血漿の量が低下します。これにより交感神経の緊張が高まり、尿細管での水やNaの吸収が亢進します。アルドステロンの分泌亢進なども起きます。これも腹腔内に腹水が増える原因となります。
滲出性腹水
血管透過性の亢進
細菌感染や悪性腫瘍などによる炎症が起こるとその部位に白血球などを運ぶため血管の隙間が拡がります。これにより炎症に関係のあるものが血管を通りやすくなりますが、同時に水も通りやすくなり、腹腔内ににじみ出ます。
リンパ流のうっ滞
主に腫瘍細胞によってリンパ管が閉塞することで、リンパの流れがうっ滞し、リンパの吸収障害が起き滲出液が腹腔内に貯留します。
漏出液は排出の量より作られる量が増えることで漏れでて溜まっていき、浸出液は吸収する量が減ることで溜まっていきます。
腹水の検査と考えられる原因疾患
腹水は見た目の色でも分類わけができそれにより考えられる原因が変わります。
また急性疾患より慢性疾患で生じやすい傾向にあります。
原因として大きく分けると肝臓、心臓、腎臓、その他があります。
では詳しくみていきましょう。
漏出性
漿液性
色:透明~淡黄色
原因疾患:肝硬変、門脈圧亢進、うっ血性心不全、吸収不全症候群、ネフローゼ症候群など
滲出性
血性
色:血色
原因疾患
癌性腹膜炎→腹水鏡見:腫瘍細胞
腹腔内出血、子宮外妊娠など→腹水鏡見:ヘマトクリット高値
急性膵炎→腹水鏡見:アミラーゼ高値
膿性
色:混濁
原因疾患:化膿性腹膜炎、細菌性腹膜炎など→腹水鏡見:細菌(+)、好中球≧250μl
胆汁性
色:暗褐色
原因疾患:急性胆嚢炎、胆嚢胆管穿孔など→腹水鏡見:直接ビリルビン高値
乳び性
色:クリーム色
原因疾患:悪性リンパ腫、胃癌、膵癌、リンパ管閉塞、フィラリアなど→腹水鏡見:脂肪成分高値
その他
結核性腹膜炎→腹水鏡見:結核菌(+)、ADA高値、リンパ球上昇
まとめ
今回は腹水についてまとめました。
僕は生理検査を主にやっており腹部エコーでは腹水の貯留はしばしば見ます。
しかし腹水の検査は忘れている部分もあり良い復習になりました。
特に腹水が溜まる機序や原因疾患をしっかり覚えておくといざエコーで腹水をみたときに次にどこを見れば良いかがわかると思います。
腹水(+)だけでなく肝臓はどうか、胆嚢・胆管は?悪性腫瘍は?膵炎は?などエコーで原因を探ることが大切です。
一歩先の検査ができるようにも参考になればと思います。
ではまた
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