診療報酬改定2026について、
「何が変わるのかは何となく分かるけど、結局どう対応すればいいのか分からない」「何から手をつければいいのか整理できていない」
と感じていませんか?
今回の改定は、賃上げや物価高騰への対応、医療DXの推進などが大きなテーマとなっており、内容としては理解できても、実際の現場にどう影響するのか、どこに優先順位を置くべきなのかが見えにくい構造になっています。
さらに、ベースアップ評価料や物価対応加算などは「対応した医療機関だけが評価される仕組み」となっているため、何となく理解しているだけでは不十分で、具体的な行動につなげられるかどうかが重要になります。
また、外来では長期処方の推進による通院回数の減少、紹介・逆紹介の強化による患者の流れの変化など、これまでの運営の前提が少しずつ変わり始めています。
この記事では、診療報酬改定2026がクリニックに与える影響を「収益・外来・患者・業務」という視点から具体的に整理します。
読み終えたときに、「何が起きるのか」「どこに影響が出るのか」が明確になり、次の記事で解説する“具体的な対策”にスムーズにつながる内容になっています。
ただし正解はなく、施設の状況によっても大きく変わります。
一つの考えとして参考にしていただければ幸いです。
収益は増えても利益は残りにくい

今回の診療報酬改定は、全体として+3.09%のプラス改定とされています。
この数字だけを見ると、「収益は上がる」と感じるかもしれません。
しかし、実務レベルで見ると状況はかなり異なります。
結論から言うと収益は増えても、利益は残りにくい構造になっています
なぜ利益が残らないのか
今回の改定で増える点数の多くは、医療機関の利益を増やすためのものではなく、以下のコストを補填する目的で設計されています。
- 人件費(賃上げ対応)
- 物価・光熱費の上昇
- 業務負担の増加
例えば、ベースアップ評価料は「賃上げを実施すること」が前提となっており、得られた点数はそのまま給与に反映される必要があります。
また、物価対応加算についても、日々の運営コスト増加を補う位置づけであり、利益として残るわけではありません。
現場で実際に起きること
この構造を踏まえると、クリニックの現場では次のような変化が起こります。
- 点数は増えているのに、手元に残る利益は変わらない
- 人件費・経費の上昇で経営が圧迫される
- 業務量は増えているのに人員は増やせない
つまり「忙しくなるのに楽にならない」状態が起きやすい改定です
何もしない場合のリスク
さらに重要なのはここです。
今回の改定は、
「全体的に底上げされる」仕組みではなく、“対応した医療機関だけが評価される仕組み”
になっています。
そのため、
- ベースアップ評価料を取得していない
- 物価対応加算を取りこぼしている
- 届出が遅れている
といった場合、同じ診療内容でも収益に差が出る可能性があります
今回の改定の本質
ここまでを整理すると、今回の改定は
「プラス改定」ではなく「対応力によって差がつく改定」
です。
つまり“何もしないこと自体がリスクになる改定”といえます
収益への影響|“対応したクリニックだけ増収”になる理由

今回の診療報酬改定2026では、もう一つ重要な特徴があります。
それは「対応したクリニックだけが収益を伸ばせる仕組み」になっている点です。
これまでの改定では、ある程度すべての医療機関に均等に影響するケースも多くありました。しかし今回の改定は違います。
制度を理解し、必要な対応を行った医療機関だけが評価される設計になっています。
収益に直結する2つのポイント
特に重要なのが以下の2つです。
①ベースアップ評価料
今回の改定で最も大きな影響を与えるのが、このベースアップ評価料です。
主な特徴は以下の通りです。
- 対象職種が拡大(事務職員なども対象)
- 点数の引き上げ
- 段階的な増額(2027年以降さらに増加)
ただし、この評価料には明確な前提があります。
実際に賃上げを行っていること
つまり、
- 賃上げをしていない
- 計画・管理ができていない
場合は、そもそも算定できません。
同じ診療をしていても対応の有無だけで収益に差が出る仕組みです
②物価対応加算
もう一つ見落とせないのが、物価対応に関する加算です。
主なポイント:
・外来・在宅で幅広く算定可能
・ほぼすべての患者に関係
・今後さらに増額予定
一見すると1件あたりの点数は小さいですが、
対象患者数が多いため年間では大きな差になります
例えば、
・1日50人の外来
・月20日稼働
とすると、
わずかな点数差でも年間で数十万円規模の差になる可能性があります
「取りこぼし」がそのまま損失になる
今回の改定で特に注意すべきなのが、
算定漏れ・対応漏れがそのまま収益ロスになる点
です。
具体的には以下のようなケースです。
- 届出をしていない
- 制度の理解不足
- 院内体制が整っていない
- チェック体制が不十分
これらはすべて、
「本来取れるはずの点数を逃している状態」です。
レセプト業務の現場では、
「1点〜2点くらいなら大丈夫」
と見過ごされるケースも少なくありません。
しかし実際には、1〜2点の差 × 患者数 × 日数で考えると、
年間で大きな収益差になります
今回の改定で起きる本当の差
ここまでを整理すると、今回の改定で起きるのは
「点数が上がるかどうか」ではなく「対応できているかどうかの差」
です。
つまり頑張った分だけ報われるではなく「対応しないと置いていかれる」構造となっており、つらい現実を感じます。
【要注意】ベースアップ評価料で“差が固定される”

今回の診療報酬改定で、最も見落とされやすく、かつ影響が大きいのが
ベースアップ評価料による“差の固定化”です。
現時点では、ベースアップ評価料の取得率はおおよそ40%前後とされています。
つまり、半数以上の医療機関がまだ対応できていない状態です。
この状況を見ると、
「まだ様子見でも大丈夫では?」と感じるかもしれません。
今回の制度設計は、
早く対応した医療機関ほど有利になる構造
になっています。
理由は大きく3つあります。
①段階的な増額設計
ベースアップ評価料は、今回だけで終わりではありません。
2027年以降、さらに増額される予定です
つまり、
- 早く対応した医療機関 → 増額分もそのまま受け取れる
- 遅れて対応した医療機関 → 取り遅れる期間が発生
②一度ついた点数差は簡単に埋まらない
診療報酬は積み上げ型の制度です。
そのため、一度ついた差は、そのまま継続しやすい
という特徴があります。
例えば、
- ベースアップ評価を取得している
- していない
この違いは、毎日の診療ごとに差が積み重なっていきます
③今後の制度変更リスク
さらに重要なのは、今後の制度の方向性です。
今回の改定は「賃上げ対応」が大きなテーマであり、今後も継続的に評価されていく可能性が高いと考えられます。
そのため、
- 取得している医療機関 → 標準化
- 未取得の医療機関 → 減算対象
といった流れになる可能性も否定できません。
“様子見”が一番危険な選択
ここまでを踏まえると、「まだ様子を見る」という判断が最もリスクの高い選択になります。
よくあるパターン
- 他のクリニックの動きを見てから
- 忙しいので後回し
- 制度が難しくて手をつけていない
これらはすべて、気づいたときには差が広がっている状態になりやすいです。
つまりベースアップ評価料に関しては、
「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」で差がつく制度
です。
つまり“今動くかどうか”がそのまま将来の収益差につながることになりそうです。
外来診療への影響|通院回数減少と収益構造の変化

今回の診療報酬改定2026では、外来診療のあり方にも大きな変化が生じます。
特に影響が大きいのが、通院回数の減少と収益構造の変化です。
今回の改定では、医療費抑制の流れの中で
- 長期処方
- リフィル処方
がこれまで以上に推進されています。
これは患者にとっては利便性の向上につながる一方で、クリニック側には大きな影響を与えます。
起きる変化|「来院回数」が減る
これまでの外来は、
患者数 × 来院回数で収益が成り立っている側面がありました。
しかし今回の改定により、
- 処方日数の延長
- 受診間隔の拡大
が進むことで、
1人あたりの来院回数が減少する可能性があります
来院回数が減るとどうなるか。
単純に考えると、
- 再診料の減少
- 検査機会の減少
- 処置・指導の機会減少
つまり外来収益が徐々に減少するリスクがあります。
見落としがちなリスク|“患者離脱”
さらに重要なのが、患者離脱リスクの増加です。
来院間隔が長くなることで、
- 他院へ流れる
- 通院習慣が途切れる
- 自己判断で受診しなくなる
といったケースが増える可能性があります。
つまり「来院頻度の低下=関係性の希薄化」になる可能性も考えられます。
今後求められる外来の考え方
今回の改定により、外来診療は
「回数で稼ぐ」から「関係性で維持する」モデルへ
変わるのではないかと思います。
具体的な変化としては
- 次回予約の重要性が高まる
- 適切な処方日数の設計
- 継続フォロー体制の強化
という点です。
つまり外来において最も重要なのは、
患者を“来てもらう”から“離さない”へという考え方の転換です。
これまでと同じ運用を続けていると
気づかないうちに患者数が減少していく可能性があります。
医療DXの影響|対応していないと“見えない不利益”が生じる

診療報酬改定2026では、医療DX(デジタル化)の位置づけも大きく変わっています。
これまでの医療DXは、
- 対応していれば加算が取れる
- 未対応でも大きな影響はない
という「プラス要素」に近いものでした。
しかし今回の改定では、
DXは“加点要素”から“前提条件”へと変わりつつあります
なぜ医療DXが重要なのか
今回の制度設計では、
- 情報連携
- 電子カルテ
- データ共有
といった仕組みが、各種加算や体制評価の前提として組み込まれています。
つまりDXに対応していないと、そもそも評価対象にならない可能性があります
現場で起きる変化
医療DXの対応状況によって、日常業務には明確な差が生まれます。
✔DXに対応している場合
- 情報共有がスムーズ
- 業務効率が向上
- 加算要件を満たしやすい
✔DX未対応の場合
- 手作業が多く非効率
- 事務負担が増える
- 人手不足が深刻化
- 加算取得の機会を逃す
つまり同じ診療をしていても、効率と収益の両面で差がつくということになります。
“見えない不利益”が最も危険
DX未対応の問題は、すぐに収益が下がるわけではないことです。
しかし実際には、
- 業務効率が低い
- 人件費が増える
- 算定漏れが発生しやすい
といった形で、気づかないうちに損失が積み重なります
今回の改定での本質
今回の診療報酬改定は、
「DXをやると有利」ではなく「やっていないと不利になる」段階に入っています
つまり“対応の有無がそのまま経営差につながる領域”になっていきていると考えられます。
紹介・逆紹介の影響|“選ばれるクリニック”しか残らない

診療報酬改定2026では、外来機能分化の流れがさらに強まります。
これは簡単に言うと、病院とクリニックの役割をより明確に分ける動きです。
病院側の変化|外来を抱えなくなる
今回の改定では、病院に対して
- 外来患者の適正化
- 紹介状なし受診の制限
- 逆紹介の推進
が強く求められています。
つまり病院は外来患者を減らす方向に動くように進んでいくのかもしれません。
この流れにより、
- 病院からの紹介患者が増える
- クリニックの役割が拡大する
といった変化が起こります。
また、紹介患者に対する評価(加算)も設定されており、
紹介を受けること自体が収益につながる仕組み
になっています。
ここで多くの方が誤解しがちですが、
患者は自動的に流れてくるわけではありません
病院側は、「どのクリニックに紹介するか」を選びます
“選ばれる基準”はすでに変わっている
紹介先として選ばれるクリニックには、一定の条件があります。
✔選ばれやすいクリニック
- 診療の質が安定している
- 対応がスムーズ
- 情報共有ができる(DX対応)
- 紹介後のフォローがしっかりしている
✔選ばれにくいクリニック
- 対応にばらつきがある
- 情報連携が弱い
- 紹介後の対応が不明確
つまり“紹介されるクリニック”と“されないクリニック”に分かれるということになります。
今後の外来の本質
これまでの外来は、
「患者が来るのを待つ」スタイルでも成立していました。
しかし今後は、
「選ばれること」が前提の時代に変わりそうです。
業務への影響|人手不足と業務負担はさらに増える

診療報酬改定は、収益や制度だけでなく、日々の業務にも大きな影響を与えます。
結論から言うと、業務量は増える一方で、人員は増やしにくいという状況がより強くなります。
増える業務|“見えにくい負担”が多い
今回の改定で増加する業務は、単純な作業量だけではありません。
主な増加業務
- 各種届出・再届出対応
- ベースアップ評価料の管理・記録
- 賃上げに関する説明・調整
- 医療DX関連の対応
- 加算要件の確認・運用管理
これらはすべて、日常業務に“追加で乗ってくる仕事”です。
現場で起きること
実際の現場では、以下のような変化が起きやすくなります。
- 事務作業が増えて手が回らない
- スタッフの負担が増加する
- 確認漏れ・算定漏れが発生する
- 業務の属人化が進む
特に注意が必要なのは「忙しさによる取りこぼし」です。
“人を増やす”だけでは解決しない
業務量が増えた場合、人員を増やす
という選択肢が考えられますが、
現実的には
- 採用が難しい
- 人件費が増える
- 教育コストがかかる
結果として簡単に人は増やすのはむずかしいです。
今回の改定で起きる本質的な変化
今回の改定は、
「人で回す運用」から「仕組みで回す運用」への転換
が求められているのではないかと感じます。
必要になる考え方
- 業務の見直し
- 無駄な作業の削減
- 役割分担の明確化
- DXによる効率化
つまり従来のやり方では限界が来るのではないかと思われます。
見落としがちなリスク
業務負担が増えることで、以下のリスクが高まります
- 算定漏れ
- 届出ミス
- クレーム対応の遅れ
- スタッフ離職
これらはすべて収益・運営に直結する問題となるため注意が必要です。
患者対応への影響|説明負担の増加とトラブルリスク

診療報酬改定では、制度や収益だけでなく、患者対応にも大きな影響が出てきます。
特に現場で感じやすいのが、説明負担の増加とトラブルリスクの上昇です。
患者負担の変化
今回の改定では、患者側にもいくつかの変化があります。
主な変更点
- 食費など一部負担の増加
- 先発品使用時の自己負担増
- 処方内容の変化(長期・リフィル)
これらは制度としては小さな変更に見えますが、
患者にとっては「負担増」として認識されやすい部分です。
現場で起きる変化
こうした変化により、現場では以下のような状況が増えてきます。
- 「なぜ負担が増えたのか」といった質問
- 薬剤変更に対する不満
- 処方内容への不安
- 会計時のトラブル
つまりこれまで以上に説明が求められる場面が増えることになります。
説明できるかどうかで差がつく
ここで重要なのが制度の変更を説明できるかどうかです。
例えば、
- なぜこの金額になったのか
- なぜこの薬なのか
- なぜ通院間隔が変わったのか
これらを適切に説明できるかどうかで、患者の納得度は大きく変わります。
スタッフへの影響
説明負担が増えることで、スタッフにも影響が出ます。
- 窓口対応の時間が長くなる
- クレーム対応の増加
- 精神的負担の増加
結果として現場の疲弊につながる可能性があります
見落とされがちな重要ポイント
患者対応で重要なのは、
「制度を正しく理解しているか」だけではありません。
“わかりやすく伝えられるかどうか”
ここが非常に重要です。
診療報酬改定2026は“何もしないリスク”が最も大きい

今回の改定は、
- 収益構造の変化
- 外来のあり方の変化
- 業務負担の増加
- 患者対応の変化
といったように、クリニック運営全体に影響を与える内容となっています。
そして最も重要なのは、
これらの変化が「一部」ではなく「全体」に影響することです。
今回の改定は、
「知っているかどうか」ではなく
「対応できているかどうか」で差がつく改定
そして最大のリスクは「何もしないこと」
次の記事では、ここまで解説した影響を踏まえて
今すぐやるべき具体的な対策・戦略を、実務レベルで考えていきます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
全体的な概要はこちらからで開設しています⇩

