2026年度診療報酬改定では、医療機関の賃上げ対応としてベースアップ評価料が大きく見直されます。
今回の改定では、点数の引き上げだけでなく、対象職員の拡大、届出様式の見直し、実績報告の仕組みなど、医療機関側で確認すべきポイントが多くあります。
特に重要なのは、すでにベースアップ評価料を算定している医療機関であっても、2026年6月以降に算定を継続する場合は改めて届出が必要という点です。
厚労省の特設ページでも、これまで届け出ていた医療機関を含め、全ての医療機関は5月中に届出が必要と案内されています。
この記事では、ベースアップ評価料2026について、制度の概要、届出方法、報告時期、現場で回すための注意点まで、医療機関向けにわかりやすく解説します。
概要編はこちら⇩
ベースアップ評価料や物価対応加算とは?診療報酬改定2026外来はどう変わる?
ベースアップ評価料とは?
ベースアップ評価料とは、医療機関で働く職員の賃上げを支援するために設けられた診療報酬です。
簡単にいうと、
職員の給与を引き上げた医療機関に対して、診療報酬でその原資を補う制度
です。
ただし、補助金のように一定額が支給される制度ではありません。
ベースアップ評価料は、患者数や算定件数によって収入が変動する業績連動型の診療報酬です。
そのため、単に届出をすれば収益が増える制度ではなく、得られた収入を職員の賃金改善に充て、実績を報告する必要があります。
2026年改定でベースアップ評価料はどう変わる?
2026年度診療報酬改定では、ベースアップ評価料に大きな見直しが入ります。
主な変更点は以下の通りです。
| 変更点 | 内容 |
|---|---|
| 点数の引き上げ | 外来・在宅ベースアップ評価料などが大幅に増点 |
| 段階的評価 | 2026年度、2027年度で段階的に点数が上がる |
| 継続賃上げの評価 | 以前から賃上げに取り組む医療機関は高く評価 |
| 対象職員の拡大 | 事務職員や一部医師なども対象に含まれる |
| 届出・報告の見直し | 届出様式や実績報告の確認が必要 |
今回の改定では、令和8年度に一般職員で3.2%、看護補助者・事務職員で5.7%の賃上げ目標が示されています。
ただし、この目標に届かない場合でも、評価料の算定自体は可能とされています。
重要なのは、ベースアップ評価料で得た収入を、対象職員の賃金改善に充てることです。
ベースアップ評価料は「届出・賃上げ・報告」の3点セット
ベースアップ評価料で最も誤解されやすいのが、届出を出せば終わりではないという点です。
この制度は、次の3つがそろって初めて成立します。
- 施設基準の届出を行う
- 実際に賃上げを行う
- 実績を報告する
つまり、ベースアップ評価料は「算定する制度」ではなく、継続して運用する制度です。
届出後に賃上げの実行や記録管理ができていなければ、後から返還リスクが生じる可能性もあります。
制度設計や運用に注意が必要です。
ベースアップ評価料の届出はどうやる?
ベースアップ評価料を算定するには、施設基準の届出が必要です。
基本的な流れは以下の通りです。
- 厚労省の特設ページで自院の区分を確認
- 該当する届出様式をダウンロード
- Excel様式に必要事項を入力
- 管轄の地方厚生局・都道府県事務所へ提出
- 算定開始後、賃上げを実施
- 毎年8月に中間報告・実績報告を行う
届出は原則として、医療機関の所在地を管轄する地方厚生局・都道府県事務所ごとに設定された専用メールアドレスへ、Excelファイルを提出する形で行います。
届出様式はどこにある?
届出様式は、厚生労働省の
「令和8年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料等について」
の特設ページに掲載されています。
医療機関向けには、ベースアップ評価料届出様式(様式95〜100)が案内されています。
また、施設区分によって必要な様式が異なるため、まずは自院がどの区分に該当するかを確認する必要があります。
| 施設区分 | 主に確認すべき内容 |
|---|---|
| 無床診療所 | 外来・在宅ベースアップ評価料 |
| 有床診療所 | 外来・在宅+入院関連の確認 |
| 病院 | 入院ベースアップ評価料、入院料減算の有無 |
| 訪問看護ステーション | 訪問看護ベースアップ評価料 |
| 保険薬局 | 調剤ベースアップ評価料 |
| 歯科診療所 | 歯科外来・在宅ベースアップ評価料等 |
2026年6月以降も算定するなら再届出が必要
2026年度改定で特に重要なのが、現在算定中の医療機関でも再届出が必要という点です。
2026年6月以降にベースアップ評価料を算定する場合、すでに届け出ている医療機関であっても、2026年6月1日までに改めて施設基準の届出を行う必要があります。
「以前に届出をしているから大丈夫」と判断してしまうと、算定開始に影響する可能性があります。
期限内に届出を行わない場合、
- ベースアップ評価料を算定できない
- 賃上げ原資を確保しにくくなる
- 医療機関側の持ち出しで賃上げ対応が必要になる
といったリスクがあります。
そのため、実務上は5月中に届出を完了させる意識が重要です。
ベースアップ評価料の報告はいつ?
ベースアップ評価料は、算定後の報告も重要です。
基本的には、毎年8月に報告が必要です。
| 区分 | 報告内容 | 提出時期 |
|---|---|---|
| 継続算定している医療機関 | 前年度の実績報告+当年度の中間報告 | 毎年8月 |
| 2026年6月から初めて算定 | 当年度の中間報告 | 2026年8月 |
| 翌年度以降 | 実績報告 | 翌年8月 |
2026年度算定分については、2026年8月に中間報告、2027年8月に実績報告が必要となる流れです。
ここで注意したいのは、6月から算定を開始した場合、最初の報告はすぐ2か月後の8月に来るという点です。
届出だけで安心せず、算定開始直後から記録を残しておく必要があります。
報告で確認される内容
報告で見られるのは、主に次の2点です。
- ベースアップ評価料でどれくらい収入があったか
- その収入をどれくらい賃金改善に充てたか
つまり、報告の目的は、
「評価料で得た収入を、きちんと対象職員の賃上げに使ったか」を確認すること
です。
そのため、以下の記録を残しておく必要があります。
- 給与台帳
- 賞与台帳
- 手当の支給記録
- 法定福利費の計算根拠
- 評価料収入の月別管理表
現場で回すためのコツ
ベースアップ評価料は、制度の理解だけでなく、現場で回せる仕組みづくりが重要です。
月次管理を行う
年1回まとめて確認しようとすると、報告時にかなり苦労します。
最低限、毎月以下を確認しましょう。
| 月次確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価料収入 | レセプト・算定件数から確認 |
| 賃上げ支給額 | 基本給・手当などの支給額 |
| 法定福利費 | 社会保険料等の事業主負担分 |
| 差額 | 収入と支出のズレ |
Excel1枚でもよいので、月別に管理することが重要です。
担当者を決める
よくある失敗は、「誰かがやっているだろう」となってしまうことです。
医事課、総務、院長、事務長の間で責任があいまいになると、管理が抜けます。
ベースアップ評価料については、
- 届出担当
- 月次管理担当
- 報告担当
を明確にしておくことが大切です。
「ベースアップ手当」で見える化する
実務上は、基本給を直接引き上げる方法だけでなく、毎月固定の手当として支給する方法も検討されます。
たとえば、
ベースアップ手当
として支給すれば、評価料収入との対応関係を管理しやすくなります。
ただし、手当として運用する場合は、就業規則や給与規程との整合性も確認が必要です。
制度終了時や点数変更時の扱いも含め、社労士に確認しておくと安心です。
書類作成時のポイントと注意点
施設区分を間違えない
無床診療所、有床診療所、病院では必要な届出や確認項目が異なります。
特に病院では、入院ベースアップ評価料や入院料減算の有無も関係します。
対象職員を正しく整理する
2026年度改定では対象職員が広がっていますが、全員が対象になるわけではありません。
対象外となり得る職員には、以下のような例があります。
- 経営者
- 法人役員
- 業務委託・請負の勤務者
- 一部の高年齢医師等
一方で、派遣職員については条件付きで対象に含められる場合があります。
対象職員の整理を誤ると、報告時や監査時に問題となる可能性があります。
定期昇給とベースアップを混同しない
ベースアップ評価料でいう賃上げは、通常の定期昇給とは別に考える必要があります。
毎年の昇給を行っているからといって、それだけでベースアップ評価料の賃金改善として扱えるとは限りません。
基本的には、
- 基本給の引き上げ
- 毎月固定で支払う手当の引き上げ
として、継続的な賃金改善を行う必要があります。
社会保険料も含めて考える
賃上げを行うと、給与だけでなく法定福利費も増加します。
そのため、評価料収入をそのまま全額手取りの賃上げに回すのではなく、社会保険料などの事業主負担分も含めて設計する必要があります。
記録を必ず残す
ベースアップ評価料は、後から報告する制度です。
そのため、
- いくら収入があったか
- 誰にいくら支給したか
- どのような形で賃上げしたか
を説明できる状態にしておく必要があります。
記録が残っていないと、報告時に説明できず、返還リスクにつながる可能性があります。
困ったときはどこに相談する?
ベースアップ評価料は、診療報酬だけでなく、給与・労務・会計にも関係します。
困ったときは、内容に応じて相談先を分けるのがおすすめです。
| 困りごと | 相談先 |
|---|---|
| 様式や提出先が分からない | 厚労省特設ページ・地方厚生局 |
| 算定できる評価料が分からない | 医事課・レセプト担当・医療経営コンサル |
| 給与設計が不安 | 社労士 |
| 就業規則や手当設計が不安 | 社労士・顧問税理士 |
| システム集計が不安 | レセコン・電子カルテベンダー |
| 報告書作成が不安 | 医事課・労務担当・専門家 |
特に、手当の設計や給与規程に関わる部分は、院内だけで判断せず、社労士に相談するのが安全です。
ベースアップ評価料は結局やった方がいい?
結論としては、多くの医療機関では前向きに対応を検討すべき制度です。
理由は3つあります。
賃上げ原資を確保できる
物価高や人件費高騰が続く中で、評価料を算定しない場合、賃上げ原資を自院で確保する必要があります。
人材確保・定着に直結する
今後は、給与水準を維持・改善できる医療機関ほど、人材確保で有利になります。
未対応施設との差が広がる
2026年度、2027年度と点数が段階的に上がるため、対応している施設と対応していない施設の差は広がります。
一方で、届出だけして運用管理ができない状態は危険です。
以下に当てはまる場合は、慎重に検討しましょう。
- 管理担当者がいない
- 対象職員の整理ができていない
- 賃上げ額と評価料収入を管理できない
- 報告書作成の体制がない
つまり、ベースアップ評価料は、
「届出できるか」ではなく「継続して運用できるか」
で判断する制度です。
まとめ|ベースアップ評価料2026は“運用できる体制づくり”が重要
2026年度診療報酬改定におけるベースアップ評価料は、医療機関の賃上げを支える重要な制度です。
今回のポイントをまとめると、以下の通りです。
- 2026年改定で点数が大きく引き上げられる
- 対象職員が拡大される
- すでに算定中でも再届出が必要
- 2026年6月以降に算定する場合は5月中の届出が重要
- 毎年8月に中間報告・実績報告が必要
- 届出だけでなく、賃上げ・記録・報告までがセット
- 月次管理と担当者設定が現場運用のカギになる
ベースアップ評価料は、単なる加算ではありません。
職員の賃上げを継続的に実現するための運用制度です。
そのため、対応する場合は「とりあえず届出する」のではなく、対象職員、賃上げ方法、記録管理、報告体制まで含めて設計することが重要です。
ここまでお読みいただきありがとうございました。
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