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腹部エコー~泌尿器解剖編~

検査

どーも、もんたです。

今回は腹部エコー解剖編の第四弾として泌尿器領域をやっていきます。
解剖編の今までの記事のリンクを最後に貼っていますのでそちらもぜひご覧ください!

今回の弾では具体的に腎臓、副腎、尿管、膀胱、前立腺、精巣をまとめていきます。
皆さんはこの辺りどうでしょうか?
ちゃんと見れていますか?
腎臓は一画面で写っているようにも見えますが全ては写っていません。
気をつけないと見落としもしやすい臓器です。
特に左腎の上極や副腎は見えにくいです。
精巣のエコーはなかなかやる機会がないかもしれませんが付録程度に載せています。
描出しやすい位置はどこなのか解剖をみながら確認していきましょう。

泌尿器とは~全体像の把握をしよう~

もんた
もんた

尿の流れを青線で引いてあります。

尿を作る腎臓尿を運び出す排尿路を合わせて泌尿器といいます。

まず腎臓が最も頭側にあります。左右で位置が異なります。腎臓では血液をろ過し不要なもの(老廃物)を尿として排出します。成人で1日1000ml~1500ml作られます。
腎臓で作られた尿は腎杯、腎盂を通り尿管へ流れていきます。尿管は平滑筋でできている管で長さは25~30cmです。尿管を流れた尿は膀胱へ流れます。女性は膣の前(腹)側で子宮の下(足)側にあります。男性は直腸の前(腹)側で前立腺より上(頭)側にあります。膀胱の壁はヒダと排尿筋と呼ばれる平滑筋の層を含みます。いったんここに溜まり200~500ml溜まると尿意を感じます。膀胱から尿道を通り排出されます。尿道は男女で異なります。女性は長さ4cm程であり、膣の前庭で膀胱頚部から外尿道口に伸びています。
男性は尿道の長さが17~20cmで女性の4倍~5倍程の長さがあります。
尿道前立腺部、膜性尿道、海綿体部の3つの区分に分かれており、前立腺と陰茎を通して膀胱頚部から外尿道口に伸びています

各部解剖~各論~

腎臓・副腎

腎臓は背側にあり(後腹膜臓器)第12胸椎から第3腰椎の高さにあります。右側には肝臓があるため左腎より右腎のほうが低い位置にあり、右腎の1/3、左腎の2/3が第12肋骨に隠れます。
腎の上端に副腎が被さっています。
腹側からみると右腎の前に肝臓、十二指腸、右結腸曲があり、左腎の前には胃、脾臓、膵臓、左結腸曲があります。

腎臓の形状はソラマメのような形をしています。成人の大きさは重さ120~130g、長さ10~12cm、幅5~6cm、厚さ4cmほどです。
構造は実質と腎洞にわかれます。実質は皮質と髄質にわかれ、腎洞は腎盂、腎杯、腎動脈、脂肪織からなります。
実質内外側の低エコーは皮質、皮質よりさらに輝度が低く嚢胞とも誤認しやすい部分が髄質、エコーで中心部高エコーで見えている部分は腎洞です。

副腎腎臓の上極にある7~8gの臓器です。
右副腎は角の鋭い扁平三角形の形をしており、左副腎は扁平な半円形の形をしていますがエコーでみると形は様々で細長い線状にみえます(人、Y、⊿・・)。肝臓があるために右副腎の方が小さいです。
こんな小さい臓器ですが副腎皮質は副腎皮質ステロイドホルモン(糖の代謝やNaの再吸収などに関与)、が副腎髄質ではアドレナリンなどが分泌されるところであり、重要な臓器です。
右副腎の位置は右腎上極、下大静脈、肝臓、横隔膜脚に囲まれています。左副腎は左腎上極、大動脈、脾臓、横隔膜脚に囲まれています。

尿管

全長23~27cm。粘膜、筋層、繊維性の外膜から成ります。蠕動運動することで尿を運んでいます。

生理的狭窄部が存在し、腎盂-尿管移行部、尿管-総腸骨動脈交叉部、尿管-膀胱移行部の3か所あります。この部位は尿管結石などで詰まりやすい場所です。腎尿管のどこに結石ができたかで腎実質内、腎杯憩室内などの腎杯腎盂結石以外の腎結石(R1)、腎盂腎杯結石(R2)、腎盂尿管移行部結石(R3)、上部尿管結石(U1)、中部尿管結石(U2)、下部尿管結石(U3)と分けられています。なお上部尿管は腎盂尿管移行部から腸骨稜上縁まで、中部尿管は腸骨に重なる部位、下部尿管は腸骨に重ならない遠位尿管で尿管膀胱移行部までとされています。

膀胱・前立腺・精巣

膀胱は尿管を通ってきた尿を一時的にためておく袋状の臓器です。筋層は三層からなります。畜尿機能の他に排尿の機能も持ちます。

前立腺膀胱底に接して位置する栗の実に似た形をした腺組織です。大きさは15~25g。精液の構成成分である前立腺液を産生する場所です。前立腺の内部を尿道が走行しており、途中、精丘に射精管開口部があります。腫瘍マーカーとしても有用な前立腺特異抗原(PSA)を産生します。

精巣は楕円体で容積約20~25ccです。白膜と精巣鞘膜含覆われます。精子形成と男性ホルモン産生を行います。痛みや腫れを訴えエコーをすることがありますが腫脹であれば陰嚢水腫や腫瘍、炎症であれば精巣炎や精巣上体炎などがあります。炎症疾患では腫大し内部エコーが低下、血流増加のためカラードプラが著明です。

超音波での描出

腎臓

右腎

右腎は仰臥位、側臥位で観察します。
側臥位で背側からの観察をしたときが一番大きく描出されるためサイズを測るにはここで行います。
上極と下極わけて、2方向以上で観察しましょう。
僕の場合は背側からみて観察。計測時はここで計測をし側腹部、腹側に向かってスライドさせながらみていきます。
写真を残すとき長軸は上極と下極が同じ高さに来るところで残します。
この位置が一番腎全体にフォーカスが合いキレイな画像が残せます。
この場で90°回転させ短軸像を残します。

左腎

左腎も右腎と同様に背側観察し、側腹、腹側とスライドさせながら全体を観察します。こちらの写真は上極と下極の深さが同じ位置ではありません。どちらがより見やすいか比べて見てください。

副腎

副腎は小さい臓器であるために正常では観察が難しいです。
ズームをし正しい位置で観察しなければ描出することができません。
解剖学的にどんな場所にありどんな形状ででるのかイメージすることが大切です。
まず位置は右副腎の位置は右腎上極、下大静脈、肝臓、横隔膜脚に囲まれています。左副腎は左腎上極、大動脈、脾臓、横隔膜脚に囲まれています。
また脂肪織の中にあり、実質は細長い線状です。
これを踏まえて探していきます。
まず右副腎は仰臥位、右肋間縦走査で行います。中腋窩線上からプローブを当て肝臓の裏面と横隔膜脚の間にうつります。
左副腎はやや右側臥位~斜位で左肋間縦走査、後腋窩線上からプローブを当てます。左腎上極と大動脈の間にうつります。ただし消化管ガスもあり右副腎に比べ更に描出は難しいです。

尿管

もんた
もんた

尿管は拡張していなければ描出は困難です。

尿管結石や腫瘤などにより拡張した際に追うことができます。
実際検査では尿管を探すというよりも腎盂腎杯が拡張(水腎症)しておりそこから膀胱側に尿管を追っていくことが多いです。
尿管結石や腫瘍などの病的な何かが隠れていることが多いので尿管が描出された場合はなぜ拡張したかを検索することが大切です。
ただし尿の溜めすぎで少し腎盂拡張と尿管の一部拡張があることもあります。
画像は水腎症を起こしていて尿管を追ったら尿管結石があった症例です。

膀胱・前立腺・精巣

膀胱

尿を溜めた状態で観察します。尿量が不足していると膀胱が萎れたように萎縮し壁が肥厚してみえます。これでは病的なのかどうかの判断ができません。観察のポイントとしては膀胱内に結石などがないか(特に膀胱口)、壁の肥厚がないか(3mm以下)、肥厚があれば局所的か全周性か、肉柱形成がないかなどをみていきます。壁の局所的な肥厚、隆起性のものであれば膀胱がんを疑う必要があります。他全周性の壁肥厚であれば膀胱炎、肉柱形成があれば神経因性膀胱を疑います。
膀胱、前立腺のエコー画像です。

また頻尿や尿閉などの精査のため残尿検査を行うことがあります。
残尿検査は排尿前と排尿後で縦走査と横走査で写真をとり、下記の図のように計測します。a×b×c×0.5で計算し、排尿後が50ml未満が正常、50~100mlで軽度、100ml以上は中等とします。

前立腺

は膀胱底に接しているため膀胱を音響窓に観察します。
形状はどうか、左右対称か、大きさはどうか、膀胱に突出していないかなどを観察します。
前立腺がんでは左右非対称になります。前立腺肥大症では大きさが肥大し膀胱に突出します。前立腺肥大症の判断として大きさが少し大きくても膀胱に突出していない場合は肥大症ととらないこともあります。
計測は縦走査と横走査で写真をとり、下記の図のように計測します。a×b×c×0.5で推定重量をだします。15~20mlが基準です。20ml以上で肥大を考慮し、20~50ml未満で中等、50以上が重症です。

精巣

楕円形の形状で実質は均一なエコーパターンを示します。高周波プローブを用いて観察します。炎症性の病変を疑っている場合や精巣回転症(睾丸捻転)ではカラードプラ法が有用であるが、必ず対側と比較して評価します。下記の図は精巣上体炎の所見です。

さいごに

腎臓は一見すると画面で全てが写っているように感じてしまいますが、そうではありません。
かならず死角が存在しているので複数方向からの描出・観察が大切です。
さらっと流してしまうと数cmの腎癌を見落としてしまうことも・・。

尿管は異常がなければほとんど描出ができません。
逆に観察できるほど拡張していた場合原因検索が大切です。ガスが邪魔で難しいこともありますが体位変換や圧迫等駆使してできる限りの検索を試みましょう。
副腎も慣れるまでは難しいかもしれませんが位置がわかれば観察可能です。異常があればそこがおかしくみえるはずです。

もんた
もんた

泌尿器の部位も蔑ろにはできず割と難しい部分です。
今一度自分自身がきちんと観察できているかを確認してみてください!!

ではまた。

腹部エコー解剖編シリーズ

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